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2026.09.06LTV

CRMで売上が伸びないのはなぜ?マーケティング1.0〜7.0が示す、顧客の「どこまで」を見るか

CRMで売上が伸びないのはなぜ?

CRMを改善しようとするとき、

メールの開封率を上げる。
LINEの配信を見直す。
クーポンを出す。
休眠顧客を掘り起こす。
F2転換率を上げる。

そんな施策が候補に挙がります。

どれも間違いではありません。

けれど、施策を増やしているのに売上がなかなか積み上がらないとしたら。

一度、もう少し大きなところから考えてみてもいいかもしれません。

そもそも、CRMで「何をつくろう」としているでしょうか。

もう一度買ってもらうことなのか。
継続してもらうことなのか。

それとも、

このブランドと、これからも関わっていたいと思ってもらうことなのか。

実はこの問いは、CRMだけの話ではありません。

マーケティングそのものが、長い時間をかけて「何を見る仕事なのか」を変えてきました。

マーケティング1.0から、2026年に刊行されたマーケティング7.0まで。

その流れをたどると、CRMで売上が伸び悩んだときに、何を見直せばいいのかが少し違って見えてきます。

マーケティングは、何を見ながら進化してきたのか

マーケティング1.0、2.0、3.0……。

数字だけを見ると、新しい理論が登場するたびに古い考え方が否定されてきたようにも見えます。

でも、そうではありません。

コトラーらは最新の『Marketing 7.0』でも、1.0からの流れを、製品中心から顧客中心、そして人間中心へと理解が深まってきた歴史として振り返っています。

私たちは、この変化をこう捉えています。

マーケティングは、前の考え方を捨てながら進化したのではなく、
「顧客のどこまでを見るか」を広げながら進化してきた。

大きく整理すると、こうなります。

マーケティングの段階見るもの問い
マーケティング1.0商品何をつくり、どう売るか
マーケティング2.0顧客誰が、何を求めているか
マーケティング3.0人間その人は何を大切にしているか
マーケティング4.0つながり・関係購入の前後で、どう関係が続いていくか
マーケティング5.0一人ひとりテクノロジーで、どう適した体験を届けるか
マーケティング6.0体験リアルとデジタルを越えて、何を体験してもらうか
マーケティング7.0心人は何を感じ、記憶し、どう判断するのか

こうして見ると、マーケティングは少しずつ、商品から人へ近づいています。

そして、この変化はそのままCRMにもつながっています。

1.0〜3.0|商品から顧客へ。そして「ひとりの人間」へ

マーケティング1.0で中心だったのは、商品です。

良い商品をつくり、多くの人へ届ける。

商品が十分になかった時代には、とても合理的な考え方でした。

やがて選択肢が増え、顧客が商品を比較できるようになると、2.0では「顧客が何を求めているか」が重視されます。

さらに3.0では、顧客を単なる購買者ではなく、感情や価値観を持った「ひとりの人間」として捉える考え方へと進みました。コトラーら自身も、3.0を顧客の心・感情・価値観まで見る人間中心のマーケティングへの転換として説明しています。

CRMに置き換えると、この違いは意外と大きなものです。

「この人は、30日前にこの商品を買った」

という購入履歴を見るのか。

それとも、

「なぜこの商品を選んだのだろう」
「どんな変化を期待しているのだろう」
「使い始めて、今どんなことに迷っているだろう」

まで見るのか。

同じ顧客データを持っていても、見ているものが違えば、そこから生まれるコミュニケーションも変わります。

4.0|「購入」で終わらない。関係までがマーケティングになった

CRMとの関係で、大きな転換点になるのがマーケティング4.0です。

4.0では、顧客行動を

Aware(認知)
→ Appeal(興味)
→ Ask(調査)
→ Act(行動・購入)
→ Advocate(推奨)

という「5A」で捉えています。

重要なのは、Act=購入のあとに、Advocate=推奨があることです。

商品を買ってもらった。

そこで企業側の仕事が終わるわけではありません。

実際に使う。
期待していた価値を感じる。
「買ってよかった」と思う。
また選ぶ。
そして、ときには誰かに話したくなる。

購入は、関係の終着点ではなく、その途中になりました。

ここからCRMを考えると、

「どう2回目を売るか」だけを考えるのは、どこか順番が違うように思えてきます。

その前に、

1回目の商品体験はどうだったのか。
ブランドへの期待は上がったのか、下がったのか。
次もここで買う理由は生まれたのか。

を見る必要があるからです。

5.0|AIは、人間を見なくてよくする技術ではない

マーケティング5.0では、AIやデータの活用が大きなテーマになります。

大量のデータを使って行動を予測し、一人ひとりに合わせた体験を提供する。

いわば「一人ひとりを見る」ことを、テクノロジーによって大きな規模でも可能にしていく発想です。

同時にコトラーらは、テクノロジーによるスピードや効率と、人間同士の温かさや共感を組み合わせることにも触れています。

これはAIが当たり前になった今、より重要なポイントに見えます。

メールは大量につくれます。
顧客ごとに内容を変えることもできます。
行動履歴から、次に買いそうな商品を予測することもできます。

でも、

「出し分けられている」ことと、
「自分のことを分かってくれている」と感じることは、同じではありません。

CRMツールにある情報を使うことと、顧客を理解することも、同じではありません。

技術が高度になるほど、

その技術で、誰をどう理解したいのか

という問いが重要になります。

6.0|オンラインとリアルを越えて、「体験そのもの」へ

マーケティング6.0では、さらに視野が広がります。

テーマは「The Future Is Immersive」。

AR、VR、IoTなども活用しながら、デジタルとリアルの境界を越えた、より没入的な顧客体験へと進みます。コトラーらは、6.0を「PersonalからExperientialへ」の進化として位置づけています。

これもCRMに置き換えてみます。

広告を見る。
Webサイトを見る。
商品を注文する。
メールが届く。
箱を開ける。
商品を使う。
カスタマーサポートへ問い合わせる。

企業側では、

広告。
EC。
CRM。
物流。
CS。

と、別々の仕事かもしれません。

でも顧客にとっては、全部ひとつです。

「このブランドと過ごした体験」

だからCRMをメールやLINEだけの仕事として捉えてしまうと、その人が実際に経験していることの一部分しか見えません。

メールの数字が悪くても、原因はメールにないかもしれない。
商品到着までの体験で期待が下がっていたのかもしれない。
初回の商品体験が十分でなかったのかもしれない。
その前に交わした約束と、実際の商品との間にズレがあったのかもしれない。

CRMを見る範囲は、少しずつ広くなります。

7.0|目的地は、ずっと「人間の心」だった

2026年に刊行された『Marketing 7.0』では、さらに「Mind-Centric Marketing」が打ち出されました。

認知科学を取り入れながら、

人が何に注意を向けるのか。
社会との関係の中で何を信頼するのか。
何に価値を感じるのか。
どう判断するのか。

といった、人間の心の働きをマーケティングへ取り込もうとしています。

そして第1章には、こんな見出しがあります。

“The Destination Was Always the Human Mind.”

直訳すれば、

「目的地は、ずっと人間の心だった」

です。

1.0から振り返ると、これはとても象徴的です。

商品を見ていた。
顧客を見るようになった。
人間として見るようになった。
社会とのつながりを見るようになった。
一人ひとりを見るためにAIを使った。
ブランドとの体験全体を見るようになった。

そして最後に、

そのすべてを受け取っている「人の心」を見る。

マーケティングは、ずっとそこへ近づいてきたとも読めます。

では、自社のCRMは顧客のどこまでを捉えているか

ここまでを、自社のCRMに置き換えてみます。

CRMを改善するとき、

「次に何を送るか」

だけを考えていないでしょうか。

もう少し範囲を広げると、見るものが変わります。

商品を見る。
何を買ったか。どの商品を勧めるか。

顧客を見る。
誰が買ったか。どんなニーズがあるか。

関係を見る。
購入後、どんなコミュニケーションが続いているか。

体験を見る。
広告から購入、使用、継続まで、顧客は何を経験しているか。

心を見る。
その体験によって、どんな感情や記憶が残り、次の判断につながっているか。

大切なのは、「7.0までできていない会社は遅れている」という話ではありません。

1.0の商品力は、今でも土台です。
顧客ニーズも必要です。
購入データも大切です。

ただ、

数字だけでは分からない場所まで見ていくほど、CRM改善の選択肢は増えていく。

ということです。

メール一通でも、CRMの考え方は表れる

たとえば、一通の商品紹介メールでも同じです。

「この商品を何個売るか」だけを見るなら、
価格、メリット、キャンペーン、CTAを考えます。

そこに、

「この人は今、何を知りたいだろう」

という視点を加えると、役立つ情報が加わるかもしれません。

さらに、

「このブランドと関わったあと、どんな気持ちを持って帰ってほしいだろう」

まで考えれば、言葉の選び方も変わります。

同じメールです。

でも、見ている範囲が違います。

メールやLINEで「顧客が受け取りたいもの」をどう考えるかについては、別記事
「LINE登録者は増えているのに、売上につながらない理由──『何を送るか』より先に見直したいこと」
で、より実務的に解説しています。

今回お伝えしたいのは、そのさらに手前です。

CRMで何を送るかを考える前に、私たちは顧客のどこまでを見ようとしているのか。

ここを一度考えてみることです。

CRMは「次に売る」ではなく、「次に進む理由」をつくる仕事

OFFICE141では、CRMをメールやLINEの配信だけで考えていません。

広告を見た。
サイトを訪れた。
購入を迷った。
商品を選んだ。
届くのを待った。
初めて使った。
続けてみた。
もう一度買おうか考えた。

その一つひとつで、

お客様が次へ進みたいと思える理由があるか

を見ていきます。

だから、メールの数字が悪いからといって、最初からメールを直すとは限りません。

F2転換率が低いからといって、最初から2回目購入のオファーを強くするとも限りません。

その前後で顧客が何を経験し、どんな判断をしたのか。

そこまでたどって初めて、直すべき場所が見えてくることがあります。

これが、私たちが考えるCRM改善です。

売上を伸ばしたいとき、最初に見直したいこと

最後に、ひとつだけ。

自社のCRM施策を並べて、

「これは、顧客の何を見てつくった施策だろう」

と考えてみてください。

購入履歴を見てつくったもの。
顧客ニーズを見てつくったもの。
購入後の関係を考えてつくったもの。
顧客体験全体を見てつくったもの。

そして、

顧客が何を感じ、何を記憶してほしいかまで考えてつくったもの。

自社のCRMが、いまどこまで見えているのか。

それが分かると、

「配信を増やすべきなのか」
「メールを直すべきなのか」
「そもそも別の場所を直すべきなのか」

も考えやすくなります。

AIによって、マーケティングでできることはこれからも増えていくでしょう。

けれど、できることが増えるほど、

何のために、その技術を使うのか。
誰の、どんな体験をつくりたいのか。

という問いは、むしろ重要になります。

マーケティング1.0から7.0まで。

その長い変化の先にあったのは、最新のツールではありませんでした。

目的地は、ずっと人間の心だった。

CRMもまた、人と企業の間にあるその場所を考える仕事なのだと、私たちは考えています。

CRMを、顧客導線全体から見直したい方へ

メール、LINE、LP、購入後フォロー。

それぞれに施策を行っているのに、思うように売上が積み上がらないとき。

一つの媒体ではなく、顧客がブランドと出会ってから購入・継続するまでの流れ全体を見ることで、別の原因が見つかることがあります。

OFFICE141の「顧客導線レビュー」では、媒体単体の良し悪しではなく、顧客が何を知り、何を感じ、どこで判断し、なぜ次へ進むのかを導線全体から確認しています。

→ 顧客導線レビューについて詳しく見る

参考:Philip Kotler, Hermawan Kartajaya, Iwan Setiawan『Marketing 7.0: A Guide for Thinking Marketers in the Age of AI』(Wiley, 2026)/『Marketing 6.0: The Future Is Immersive』(Wiley, 2023)

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